ssicacaの会計士を目指す記録

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【企業法】設立ー不足額填補責任~2010年第1問分析~

 今回は、会社の設立時に現物出資を行った際の関係者(発起人・証明者・設立時取締役)の責任に関してです。2010年の過去問を通じて、こちらの論点を見ていきましょう。

 

 

【問題文】

 甲会社は、Aが発起人となり、募集設立の方法で設立された。

 甲会社の定款には、発起人Aが自己所有の不動産を現物出資することが記載されていたが、定款記載の価額が相当であることについて公認会計士Bの証明および不動産鑑定士の評価を受けていたため、検査役の調査は免除されていた。ところが、甲会社の成立後、Aが現物出資sた不動産について、会社成立時の定款に記載された価額に著しく不足することが判明した。この不足額について、A、B及び設立時取締役であるCは甲会社に対して支払う義務を負うか、検討しなさい。

 

【解答例】

〈総論〉

 株式会社の成立の時における現物出資財産の価額が定款に記載・記録された価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う(52条1項)。これは、資本充実の要請、株式引受人間の出資の平等の確保から課される責任である。

〈不足額填補責任〉

 まず、現物出資財産を給付した発起人であるAは、無過失責任として不足額を支払う義務を負う(同条2項柱書かっこ書き)。現物出資者である発起人について、会社の犠牲において利得させるべきではないことから無過失責任が課されている。

 次に、証明者である専門家Bは、無過失を証明できない限り、不足額を支払う義務を負う(同条3項)。これは専門家証明の適性性を確保するために課されている。

 これに対して、募集設立における設立時取締役であるCは無過失責任として不足額を支払う義務を負う(103条1項)。募集設立では、特に株式引受人を保護する必要があることから、無過失責任が課されている。

以上

 

 

【出題趣旨】監査審査会公表 

本問は、株式会社が募集設立の方法で設立された場合の現物出資及び財産引受をめぐる会社法上の問題点についての理解を問う問題である。会社成立時の現物出資財産の価額が定款記載の額に著しく不足するときの発起人等の会社に対する責任についての検討が求められる。

 

【分析】

 本問のポイントは①事案の分析、②条文操作かと思われます。

 まず①私は事案の読み取りにおいて、「募集設立」であることを読み飛ばし、「発起設立」と勘違いして進めてしまいました。すると設立時取締役に関する結論が真逆のものになってしまいます。募集設立の場合は無過失責任となりますが、発起設立では過失責任へと軽減されるのです。不足額填補責任に関する条文は52条付近(発起設立が前提)にあるので、条文とにらみ合ううちに、設定が飛んでしまうリスクがありそうです。本試験ではやってはならないですね…。

 次に②条文操作です。募集設立の設立時取締役に関する責任を記載した103条が読みづらいのです。内容としては、「無過失を証明した設立時取締役は責任を負わない」というもので、短答を受験した人にとっては簡単な内容ですよね。しかしこの103条、引用が3つもされてあってこんがらがります。初見ではミスも起こりますが、何度か目を通して得点源としたいです。条文指摘・説明型の問題の対策として、難解な条文には早いうちに慣れていきたいものです。