ssicacaの会計士を目指す記録

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【学習記録】会社法-資金調達「株主の請求」

今回は、新株発行の事前差止・無効請求について、見ていきましょう。

こちらは、対比の視点をもって取り組みたいところです。

 

2009年 第1問

【問題文】

 甲会社は、公開会社であり、種類株式発行会社ではない株式会社である。甲会社の株主Xは、同社の現経営陣と対立している。甲会社は、取締役会において乙に対して新株を発行することを決定した。この新株発行について、株主総会の決議はなされていない。この場合において、下記の問いに答えなさい。

 この新株発行の払込金額が引受人に説く有利な金額である場合、Xはこの新株発行をやめさせるために、甲会社に対して、会社法上どのような主張をすることができるか。また、Xがその主張をすることなく乙に対する新株発行が行われた場合、Xは、この新株発行の無効を主張することができるか。

 

【解答例】

〈総論〉

 公開会社であっても、既存株主の経済的利益を保護するために、有利発行の場合には、株主総会の特別決議が要求される。甲会社は、取締役会決議だけで、乙に対して新株を有利発行しようとしており、法令違反がある。また、有利発行がなされると株式価値が希釈化され、Xは、甲会社に対して、募集株式発行等差止請求権を行使して、新株発行をやめるように請求することができる。

〈規範定立〉

 上述のように、本問では取締役会決議だけで有利発行がなされている。これが、無効原因となるかが問題となる。この点、無効原因は、重大な法令・定款違反に限定されるべきである。ここで、公開会社では業務執行に準じて新株発行が行われるため、株主総会の決議も内部的な要件に過ぎず、外部的取引の安全に重点を置くべきである。また、株主は差止請求権を行使することができたはずである。したがって、本問では、重大な法令違反はなく、無効原因にはならないと解する。

 以上より、Xは新株発行の無効を主張することはできない。

 

 

 

【出題の趣旨】監査審査会公表

 本問は、公開会社における違法または不公正な新株発行(第三者割当)について、株主が会社法上どのような主張をすることができるかを問うものである。問1では、株主総会の特別決議を欠く新株の有利発行について、株主が、その効力発生前に新株発行の差止を請求できるか、また、その効力発生後に新株発行の無効の訴えを提起できるかを、検討することが求められる。

 

〈分析〉

 本問では、①事前の差止の可否、②事後の無効請求の可否が問われています。①は株主の利益保護の観点から、広く認められますが、②は取引安全を確保する観点から、厳格に判断されます。

 

 本日は以上になります。