ssicacaの会計士を目指す記録

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【企業法】資金調達―「募集株式発行無効の訴え」

 本日は資金調達―募集株式発行の無効の訴えの論点になります。

 ここは条文上、無効原因に明文規定がないため問題となるという、書いていて楽しい?箇所です。

 それでは、過去問を通じて見ていきましょう。

 

今回は2013年-第1問を取り上げます。

【問題文】

  甲会社は、発行済み株式総数100株の株式会社であり、種類株式発行会社ではなく、株券発行会社でもない。甲会社の定款には、同社の株式を譲渡により取得するには同社取締役会の承認を要する定めがある。甲会社の株主は、A(70株)、B(20株)、C(10株)であり、同社の代表取締役はA、取締役はDおよびEである。

 Aは、甲会社の資金調達を主な目的として、1株の払込金額を10万円(特に有利な払込金額ではない。)、発行する株式の数を100株、払込期日を平成24年6月18日、割当先をAとする募集株式の発行を企図した。甲会社では、過去1年以内に、募集株式の決定につき、取締役会に委任する旨の株主総会の決議はなされていないにも関わらず、甲会社は、株主総会を収集することなく、取締役会に委任することなく、取締役会の決議に基づき募集株式を発行し、Aは払込期日に全額を払い込んだ。Aは、本件募集株式発行にかかる株主総会の議事録を捏造し、甲会社を代表して、増資の登記を行った。

 その後、平成25年7月25日、Aは、自らの債務の返済のために、DおよびEに相談することなく、自己の有する甲会社株式50株をFに譲渡した。

 

 Bは、平成25年3月28日に開催された甲会社の定時株主総会において、本件募集株式の発行の事実を知った。そこで、Bは、同年4月12日に、新株発行の無効の訴えを提起した。この訴えによる無効の主張が認められるかを論じなさい。

 

【解答例】

〈問題提起〉

 甲会社は公開会社ではないため、新株発行無効の訴えは、効力発生日から1年以内に、株主等に限り提起することができる(828条1項2号かっこ書き2項2号)。これは募集株式の発行等は、多くの利害関係人が生じることから、一般原則にゆだねると法的安定性が害されるためである。株主Bは、効力発生日から1年以内に訴えを提起しているが、無効原因については明文規定がない。本件株主発行において株主総会決議(199条2項、309条2項5号)を欠くことが無効原因となるかが問題となる。

〈規範定立〉

 この点、新株発行の効力発生後は取引の安全を重視して、無効原因は、重大な法令・定款違反に限定すべきである。ここで、公開会社出ない株式会社については、その性質上、持株比率の維持にかかる既存株主の利益の保護を重視し、その意思に反する株式の発行は募集株式発行無効の訴えにより救済するというのが会社法の趣旨であると考えられる。よって、公開会社でない会社において株主総会決議を欠いていることは、重大な法令違反に該当し、無効原因となると解する。

 したがって、Bの訴えによる無効主張は認められる。 

 

以上

 

【出題の趣旨】監査審査会公表

問1では、公開会社ではない会社において、株主総会の特別決議を経ないでなされた募集株式発行の効力について、新株発行無効の訴えの原告適格や出訴期間についても指摘しつつ検討することが求められる。

 

【分析】

 がっつり論点型で、結論を覚えていなければ書けないタイプの問題でした。新株発行無効の訴えは、状況と結論を(できれば趣旨も)しっかり押さえておかなければならない論点です。①共通で無効原因になるもの、②非公開会社で無効原因になるもの、③公開会社で無効原因とならないもの、の3タイプに整理するといいかもしれません。

 本問は、結論を抑えたうえで、原告適格や出訴期間にも触れられるとさらに好印象だった模様です。これは、最初か最後にさらりと触れる程度でいいかもしれません。

 また、新株発行に関しては、差止と発行無効の訴えを対比的に抑え、発行無効の訴えが認められるのは極めて限定的というニュアンスも出せるとなお好印象かと思われます。

 

本日は以上になります。